『「学力」の経済学』(中室牧子)

◇要旨

教育については「1億総評論家」状態である。子どもを持つ全ての家系が何らかの形で教育に携わるから、誰しもが一家言を持ち合わせている。

 そんな思い込みや慣例、倫理観が蔓延る教育というテーマに対して、筆者は多量のエビデンスで因果関係の有無を論じている。

 

◇印象に残ったテーマ

・能力をほめることは、子どものやる気を蝕む

→能力の高い子どもはその言葉に慢心するか、もしくは実際の努力を認められず不貞腐れてしまいかねない。子どもをほめるときはその行為・努力に対して行うことで努力の継続、改善に繋がる。

 

・悪友は貧乏神

→飲酒・ドラック・カンニングなどの不正行為には周囲の影響が大きく関わる。「腐ったリンゴ」は実際にその通りということで、子どもを私立に通わせるなどはある程度の教育効果があるらしい。

 

・大切なのは「非認知能力」

→I.Qや学力テストで測られる「認知能力」と異なり、自制心、忍耐力、社会性やリーダーシップなどの「非認知能力」が子どもの将来の年収などに影響する。幼児教育の際には計算や記憶力を高めるだけでなく、非認知能力を鍛える場が重要。

(自分の非認知能力の低さを思うと憂鬱になる…)

 

・教育生産関数

→インプット関数:「家庭の資源」「学校の資源」

アウトプット関数:「学力」

教育においては家庭の資源の占める割合がほとんど(親の所得、学歴、遺伝、しつけ、習慣など)

しかし、教育政策を語る上では今もなお学校に期待する保護者や国民が多いように思われる。学校はあくまでも社会性などの「非認知能力」を向上させる場であり、子どもの教育には家庭のコミットが重要。